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名古屋見聞録:45

名古屋の皐月

『目には青葉 山郭公 初松魚』
あまりにも有名な山口素堂の一句である。
これ以来、時鳥と鰹は切っても切れない因縁ができた。
『聞いたかと 問はれて食った かと答へ』
という川柳が当時の江戸っ子の暮らしを彷佛とさせる。
この時期、江戸では聞いたかと言えば時鳥のことで、
そして、食ったかと言えば初鰹に決まっていた訳で、
『何のことだ?』と聞き返すようでは江戸っ子とは言えないどころか話にならない。
酒もツーといえばカーの気ごころ知れた酒友と酌み交わしてこそ百薬之長。
鰹はサバ科の回遊魚で常に黒潮の水温20度ぐらいの上層を群遊し、
鹿児島以南では春先に、関東では初夏に、三陸では盛夏に海岸近くへと接近してくる。
そして北海道の南方まで行くと今度は遠く沖合いの中層を南下し、
再び暖かい南の海へ帰って行く。これが鰹の回遊路である。
春まだ浅い頃、九州西南に現れる鰹は
土佐沖を経て紀州沖へとかかる辺りまではまだ充分に油がのっていない。
それが相模湾へ入った頃にちょうど旨い脂ののり具合となる。
青葉の季節を象徴する魚として、江戸っ子が初鰹に目の色を変えたのは
やはりそれだけ旨かったからだろう。
土佐では誰もが知っているタタキが自慢の郷土料理となり、
関東では鰹といえば刺身と決まっていたのは獲れる鰹の肉質の違いゆえのこと。
いずれも季節と風土に合った生活の知恵だ。
またこの鰹、鎌倉武士が「勝男」に通じるということでことに愛好したという。
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『三国志』で名高い劉備、字は玄徳。
漢の皇帝の末裔として、関羽と張飛と結んで諸葛孔明を軍師に、
遂に屬漢の帝位を掌中に収めるまでの波乱万丈の生涯は広く知られている。
この劉備がことあるごとに諸葛孔明を頼りとし、日に日に2人が親密になってゆくのを
関羽と張飛は喜ばなかった。その時、劉備は言った。
『孤ノ孔明アルハ猶、魚ノ水アルガゴトシ。願ハクハ復タ言フコト勿カレ』
つまり、自分にとって孔明が大事なのは魚にとって水が欠くべからざるようなもの。
その心情を察してもう何も言わないでくれ、という訳である。
ここから「水魚の交わり」という言葉が生まれている。
水と魚のごとく親密で離れがたい酒友が何人いるのか。それで男が判る。

[名古屋の皐月]

■鰹■
たたきに刺身をでと多く食される鰹ですが、
鰹を節におろした時に残る腹の身は「はらんぼ」といわれ
脂がよくのって鮮度が落ちるのが早いため、漁師以外は口にすることができなかった。
また内臓を塩づけし、みりんを加えたものは酒盗と呼ばれる珍味だ。
和食に欠かせない鰹節も土佐の名産だ。
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■鰹たたき■
鰹のタタキは長宗我部元親が四国平定の折り、
安芸の浜で大量の鰹といき当たって焼いて食べた事に始まるとか、
藩政時代に幡多で鰹の大漁があって藁で半焼きにしたのが最初だとか、
あるいは明治維新に西洋人が来高知した折り、肉の代用に鰹を半焼きにしたものを
ステーキの代わりにしたのが最初だとかいろいろな説がある。
4月に入ると土佐沖に初鰹がやってくる。5月になればニンニクも収穫され始め、
鰹の刺身の季節が到来となるが、やはり土佐はタタキだ。
節におろした鰹に塩をふり藁の火であぶるようにさっと焼く。
冷水で身を締めザクザクと厚く切り、塩や酢を振りかけ手や包丁で叩いて味を馴染ます。
これにニンニクのスライスやアサツキなどの薬味をたっぷり盛り、
酢と醤油ベースのタレをかける。一口で食べきれないほど厚く切り、
ニンニクのスライスを加えるのが土佐流だ。

■鰹の効用■
◎鰹はビタミンEが豊富。若さの秘訣は過酸化脂質を作らない事であり、
鰹に含まれるビタミンEは拡酸の働きを助け、若さを保つ。
◎鰹に含まれるナイアシンは体の調子を整え美しく健康な素肌をつくる。
◎育ち盛りの子供の強い骨づくりに鰹が役立つ。
鰹に含まれるビタミンDはカルシウムやリンの吸収能力を高める。
◎鰹に多く含まれるビタミンB1は脳細胞の働きを活発にする。
◎鰹に含まれるタウリンは交感神経の高ぶりをおさえて血圧を下げ、
血液中のコレステロールをさげて動脈硬化を防ぐ。
◎鰹にはビタミンB2が豊富だから成人病で崩れがちなホルモンのバランスを整える働きがある。

■鰹のおいしい食べ方■
《解凍方法》
◎真空包装のままボールなどに入れ、流水で解凍(15〜20分)させる。
◎真空包装のまま冷蔵庫で自然解凍(4〜5時間)させる。
どちらも少し芯のある方が包丁を入れた時に切り易い。
《定番の召し上がり方》

◎焼き目/表皮を上にして、約1.2cm位の厚さに順序よく包丁をいれる。
◎切り揃えた、たたきの上から小さじ1杯の塩をまんべんなく振りかけ、3分くらいなじませる。
◎たたきを器に盛り付け、にんにくスライス、きざみねぎ、青じそのみじん切り、
おろししょうがなどを添え、お好みの薬味と一緒にタレ/ポン酢をかける。
《ヘルシーで美味しい食べ方》

◎定番の食べ方と同じ要領のあと、たたきを器に盛り付ける。
◎薄切りにして水にさらした玉ねぎをまんべんなくふりかける。
◎更にその上からにんにくスライス、きざみねぎ、青じそのみじん切りなどを散らし、
お好みの薬味と一緒にタレ/ポン酢をかける。
《新鮮な極上鰹のみで味わえる塩たたき》

◎流水で約10分ゆっくりと解凍。指で押すと少し沈む位/芯が少し残っている位になればOK。
◎皮目から強火の近火で焼いて香ばしさをつける。食べる時まで炙っているので炙りすぎは禁物。
◎にんにく、千切り野菜、酢みかんなどと一緒に温かいうちにどうぞ。
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■鰹のたたき■
焼き霜の技法を用いるたたきは鰹の代表的な料理のひとつで、鰹の本場土佐の名をとって土佐造りとも呼ばれる。鰹の皮は生では堅くて食べにくいが、焼き霜にすると柔らかくなり食べやすくなる。と同時に焼き目の香ばしさが鰹特有の生臭みを消す効果もある。なお通常の焼き霜造りは火取ってから冷水に取り、冷やしてから造りにするが水っぽくなり味が落ちる。だから土佐造りは生温かいままで造りにする。造りにした鰹に軽く塩をふり身を引き締め、チリ酢/土佐酢を振って包丁の腹や手で軽くたたいて味をなじませる。ここからたたきの名が生まれたといわれる。最後にチリ酢のたれをかけ、少しおいて味がなじんだ時がもっとも味がよい。ニンニクの薄切り、おろし生姜、大葉、キュウリ、大根の千切り等を添える。

■鰹銀皮造り■
腹身の皮目の美しさを活かした銀造りはたたきと共に鰹を使った代表的な造りである。皮が固いので食べやすいように皮に2回切り込みを入れる。わさび、おろし生姜、大葉、キュウリの乱切り、大根の千切り等の薬味で食べる。 新鮮な鰹が手に入ったらたたきでもおいしいのですが銀皮造りにして食べると最高だ。春の上り鰹はさっぱりした味わいだが、脂がのった秋の戻り鰹は特に美味。

■鰹にんにく漬け■
鰹は赤身魚の中でも特に重厚な味が持ち味の魚だが、特有の生臭みやクセがある。ニンニクはその臭み取りの薬味として欠かせないもののひとつだが、ニンニク醤油にしてカツオをつけ込むことでクセが押さえられ、旨みは際立つ。たたきとは違った味わいのシンプルな一品である。 漬け込んでから1晩おくと、身がしゃきっと締まって濃厚な味になる。

■鰹すり流し■
中骨に付いている身/中落ちや頭の内側の身、節取りや作取りするときにでる切れ端などのくず身を無駄なく利用して汁に仕立てる。くず身とはいえ骨について飯給分は味は良く、上身を使うよりもコクのある汁になる。 身を裏ごししてから味噌汁に入れて炊き、鰹の旨みを十分に引き出してから最後にこして汁だけを味わう。

■なまりと蕗の煮物■
フキ、タケノコともに春の味で鰹とはよく合う取り合わせだが、なまり節を使って仕立ててみた。なまり節は手で適当な大きさにちぎって加えるが、こうしたほうが包丁でそぎ切りなどにするよりも味がしみやすく盛りつけにも風情がでる。なまり節は市販の物でも良いが、色の悪くなった鰹などを利用した自家製を使うのも知恵。

■なまりと胡瓜の和えもの■
なまり節はさっぱりとした味わいなので酢のものに仕立てても美味しい。キュウリのほかウドやワカメなどとも相性がよい。 なまりをちぎったものとちぎってより香りを出した木の芽を加え山椒味噌であえることで、初鰹の時期の季節感を出した。また合わせ酢は使わず、なまり節にレモンの絞り汁をかけるだけにとどめ木の芽の香りを活かしている。

■酒 盗■
カツオの内臓で作る塩辛である。酒の肴として大変美味でついつい酒が進んでしまうところから酒盗と名付けられたといわれる。もともとはなまり節製造の時に大量にでる内臓を活かすため、浜で作られた珍味だったとも伝えられる。このまま突き出しとして使うほか酒粕と混ぜて和え衣/酒盗味噌にしたり、白味噌と混ぜた地に以下などをつける酒盗漬けなどにも利用される。

■鰹のさく、オランダ煮■
カツオをさくに取り、刺身などに使った残りを利用する。皮付きのまま適当な大きさに切り分け塩を軽くふる。片栗粉をまぶしつけサラダ油で揚げる。出汁12、淡口醤油1、味醂1,酒1の割りで合わせ、砂糖を少量くわえた地で炊く。フキを色よく茹で皮をむき、出汁、醤油、味醂を合わせた地で煮含める。カブを茹で薄味の八方地で炊く。これらを器に盛りつける。(湖畔亭・神奈川)

■鰹あら煮■
カツオのアラ/カマ・中骨・血合いなどを一口大に切り分けザルに並べる。熱湯をかけて霜降りにし冷水に落として、水を換えながら汚れをきれいに洗い落とす。水気をよく切ってから鍋に入れる。酒、砂糖、濃い口醤油をひたひたに加えて味をととのえる。アラの上にショウガの薄切り/皮でもよいを並べ、中火で炊きつめる。上がりに味醂を少量たらす。(青山クラブ・東京)。

■鰹火取り腹簾■
カツオのハラス/腹簾に金串3本を末広に打つ。強火の直火にかざして皮目、身の両面を火取る。直ちに氷水に落として冷やし、水気をよくふき取ってから一口大に切る。山椒味噌と刺身醤油を添える。(青山クラブ・東京)

■鰹ちちこの刺身 ■
鰹のチチコ/心臓)は大きく、しかも意外とクセや臭いが少ないので新鮮なものは刺身にする。ペーパータオルを厚めに敷き、水洗いして水気をよくふき取った心臓を置く。指先で強めに押して表面の血を出してから包丁を縦に入れて切り開く。切り口にペーパータオルを強く押しつけて中の血を抜いてよく水洗いする。水気をふき取って薄切りにして盛りつける。(青山クラブ・東京)

■鰹はらんぼ、香味和え■
カツオのハランボ/腹先を皮付きのままひも状に細く切る。提供する直前に豆板醤と少量の豆鼓味噌/市販品。中国料理の調味料で大豆を醗酵させて乾燥させた豆鼓をペースト状にしたもの、醤油で和える。(湖畔亭・神奈川)

■鰹つみれ鍋■
カツオを上身などにする時に出る切り落としや、くず身を包丁でよくたたいて田舎味噌、おろしショウガ、きざみネギ、少量の溶き卵をよく混ぜ合わせて丸に取る。吹い地を火にかけ沸いたところに落として固める。つみれを器に盛り、先の吸い地を張る。塩茹でして色出ししたミズ菜と千切りのユズを添える。時には別に赤おろしを入れたポン酢醤油を添えてもよい。(湖畔亭・神奈川)

■酒盗のお茶漬け■
枕崎産の酒盗で、あまり塩気が強くなく半年以上熟成させたものを使う。酒盗を細かく刃たたきして炊きたてのご飯の上にのせる。細かくきざんだ細ネギをたっぷりふりかける。酒をきかせ塩味をつけた熱々の出汁をかけてお茶漬け風に仕立てる。(竹林亭・福岡)

■鰹はらんぼ、塩引き茶漬け■
カツオのハランボ/腹先にたっぷりと塩をふって2日間おく。表面の塩を洗い流して水分をふき取る。焼き上げて手で荒くむしる。ご飯の上にきざみネギ、鰹、おろしショウガの順にのせ、いりゴマを振りかけて煎茶をかける。(湖畔亭・神奈川)

■鰹茶漬け■
鰹の身は皮を取り薄く切って、濃い口醤油15、味醂1の割りのタレに漬け5〜10分おく。炊きたてのご飯の上に鰹の身をのせ、沸かし立ての熱々のお茶をかける。白ごまをふって針ノリを盛りワサビを添える。生臭みがなく素朴な味でとても美味。

■鰹はらんぼ塩焼■
カツオのハランボ/腹先に薄く塩をして焼く。脂ののったものが味がよい。

■鰹糠(ぬか)味噌汁■
中骨は椀に入る大きさに切り、霜降りして冷水に入れる。水に中骨を入れ火にかけ、沸騰が保てる火力で約20分出汁を取る。出汁を火にかけ、糠味噌/市販品、米糠、塩、こうじが原料をとき、味をみてこす。再び火にかけ、中骨と2〜3cmに切ったニラを浮かして仕上げる。
by tomhana0905 | 2007-05-01 06:40


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