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埋もれた音盤:3

同じのようでいて同じでない話

私の好きな人(恋人のような響きがあるからお気に入りの人)に
トム・ウェイツというシンガーソングライター(この言葉も死語だな)がいる。
「Closing Time」というファーストアルバムが1973年に発表したというから
当然それはレコードということになる。
彼のことはレコードを見つける前から研チャンから話は聞いていたし、
肝心のレコードもちゃっかり借りていたので、
その当時の日本人としては珍しく彼の存在だけは知っていた。
セカンドアルバムを出した頃にトムは1度だけ日本公演をやったことがある。



余談だが、私も名古屋公演の会場までは行くには行ったんだが
思いのほか混んでいたのと、そこにいたヤツ等の顔がどう見ても
「ココにいるべきヤツ等じゃない」と思えてしまって、
ただでさえ天の邪鬼だった私は後先のことも考えずに赤提灯へ直行してしまった。
(雄サンはちゃっかり彼のコンサートを見たという)
彼の新譜は遅くとも83〜4年まではレコードだったはず。間違いない。
それがある年突然「レコードなんか古い、これからはCDの時代だ」
と時代の進歩に名を借りた業界の大いなる陰謀の犠牲になって、
レコードは中古レコード屋だけで流通するもの。
これからの音楽は何と言ってもCDを媒体として増々発達するもの…。
そうやって音楽と言えばCDと何の違和感もなく思えるようになってしまった。



しかし、こうしてレコードを物置きの奥から出してきて久しぶりに見ていると、
レコードの圧倒的な存在感にただただ圧倒されてしまう。
何よりレコードはオリジナルティーに溢れていて、
まさしく布張りの単行本を買ったような満足感がある。
これだったら2500円を払っても損はないと思ってしまう。
それがCDときたらどうだ。ケース自体にはオリジナルティーのカケラもない。
演歌歌手のCDもクラプトンのCDもケース自体はまったく同じものを使っている。
オリジナルティーのあるトコロはフタを開けた裏側に挟んである紙と
ケースの裏側にあたる部分に挟み込んである紙だけ。
これすらも似たり寄ったりで、ナントも呆気無い。
それがレコードと同額、またはそれ以上の金額を取られるというのは納得いかない。
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これがレコードとCDの違い。2つを並べてみると一目瞭然なのだ。
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このレコードの場合、それ自体は2枚組でもないのに2つ折の豪華仕様になっていて
開くと歌詞が印刷されていて、何となく得した気分になるもの。
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それに引き換えCDの方はこんな感じで、
辛うじてフタを開けた裏側に挟んである紙が小冊子風に歌詞が印刷されていた。
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レコードとCDの違い、身を持って判って貰えたかな。



技術の進歩で、レコードからCDに変わらざろう得なかったというのは判らんでもない。
しかし、何が気に入らないってCDの価格の馬鹿らしさ。
外国と日本を比べると同じ新譜のCDの価格が日本では倍もするという。
外国と日本のCDの違いは日本のCDには解説書が必ずある(外国製はほとんどない)し、
歌詞カード部分では必ず原語と日本語の訳詞が載っているという違いがある。
(外国製ではないのが普通。しかしアーティストによっては載せている人もある)
レコードの価格は録音されているアーティストに支払う分は別として、
レコード本体以外のケース部分は全部紙製でできて、
手作業的なやり方で作ってあるので料金もそれ相当に掛かると言うもの判らんではない。
一方、CDの方はケースは量産体制ものだし、それ以外の紙の部分も
小さくて簡単なものだから価格的には下がって当然。
しかし、そうならないのはなぜなんだろう。
こういった部分にも青少年の愛する音楽と何にも関係ないチカラと欲が
渦巻いているということなのか。

[拾い物:1]
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「Playin' my Thang」
STEVE CROPPER 1981年・2500円(国内盤)
スティーブ・クロッパーと言っても知っている人はほとんどいないとは思うが、知る人ぞ知るという存在なのだ。このレコード、その当時で12年ぶりのソロ第2弾であり、ボーカリストのデビュー作でもあるという作品。歌はお世辞にも聞くに耐えれるものではないし、ハッキリ言って音痴と紙一重という感じなのだ。そんな彼のレコードが何と日本国内盤として発売された。80年代という時代の置き土産的なもので、当然CD化はされなかった。
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[SIDE A]
1.GIVE'EM WHAT THEY WANT(4:20)
2.LET THE GOOD TIMES ROLL(3:59)
3.PLAYIN' MY THANG(4:45)
4.FLY(3:10)
[SIDE B]
1.SANDY BEACHES(3:21)
2.WITH YOU(3:24)
3.FEET(2:58)
4.WHY DO YOU SAY YOU LOVE ME(4:53)
5.YA DA YA DA(3:54)
評価:★★★★★

[拾い物:2]
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「Night After Night」
STEVE CROPPER 1982年(洋盤)
元々スタジオミュージシャンだった彼は映画「ブルース・ブラザース」でプレイヤーとして本格カムバックを果たし、しかも同名映画にも出演して名前を売ったので彼の名前や顔は知っている人はいるかも知れない。その後もブルースブラザースバンドで2度の来日。1998年に映画の続編「ブルース・ブラザース2000」にも出演した。しかしそれは彼の経歴のほんの一部でしかない。それを証明するかのようにこんなアルバムを出していた。これまたCD化はされなかった。
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[SIDE A]
1.NIGHT AFTER NIGHT(5:00)
2.MAKE YOU FEEL LOVE AGAIN(3:25)
3.SAD EYES(4:59)
4.634-5678(4:27)
[SIDE B]
1.HEARTBEAT(3:45)
2.CAN'T BREAK THE HABIT(5:00)
3.LOVE'S SWEET SINSATION(3:33)
4.HOLD YOUE FIRE(5:00)
評価:★★★★★

[参考資料]
スティーブ・クロッパー

埋もれた音盤:3_d0016669_653189.jpg1941年ミズーリ州生まれ。9歳でテネシー州メンフィスに引っ越し、ラジオから流れるブルースやゴスペルなどの黒人音楽にも親しみ、チェット・アトキンスとビリー・バトラーのコピーをしていたという。その後、スタックス・レーベルのスタジオミュージシャンとなって、スタックスに在籍していた17組全てのアーティストのレコーディングに参加。またブッカ−T&MG’sのギター奏者として働く他、いくつものバンドで活躍した。またオーティス・レディングをはじめ、ウィルソン・ピケット、エディ・フロイドなどの黒人アーティストをプロデュスもした。そして、ソングライターとしてもR&B/ソウルの名曲と言われているオーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」や「ノック・オン・ウッド」「634-5789」「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」他、数多くの名作を世に送り出しており、本当に白人とは思えない活躍をしていた。

考えてみればブッカ−T&MG’sは白人と黒人の混成バンドだった。今ではなんでもないことだがデビューしたのは1962年。全米的にはまだまだ黒人と白人が共同して何かをするには難しい時期だったはず。テネシー州メンフィスというトコロはおもしろいところで、ブルース発祥の地と言われるビール・ストリートがあって、白人のために黒人のサウンドを作ったエルビス・プレスリーが誕生し、その後には白人を集めて黒人のための音楽を作ったスタックス・レーベルがある。黒人と白人が少なくとも文化的には混ざりあった土壌がメンフィスにはあったようだ。白人でありながら黒人音楽を愛し、白人の感覚も無理に捨てずに自然体でやってきた人、それがスティーブ・クロッパーだと思う。また、メンフィスがそれを許す場所でもあったのだろう。彼はまぎれもなくソウルマンだけどカントリーギターとソウルギターは共通点があると本人も言っているし、クロッパーのフレーズには両者が心地よく混ざっている。
by tomhana0905 | 2007-01-29 06:57


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